ランドスケープ/サウンドスケープ 音と地域性

冬の景色と冬の音。先にイメージが浮かんだのはどちらでしょう。ともすれば景色より注目されにくい音も、地域性のある空間を作り出すためにとても大切な存在だと改めて気付かされます。 2015.11.05

プロフィール

ライター:内海潤也

以前の 「グローカルに建築を考える」の振り返り

新しく何かを建設するとき、問題になる「景観」。ロンドンなんかはこの「景観」の保護のためなどで旧市街に新しいものを建てることは相当困難。その区域の町会みたいな会議で一向に話が進まないなんてことはしょっちゅうある。日本は結構おかまいなしでバンバンと新しいものを建てていくので駅前なんかはみんな似たり寄ったりになる。アトレパワー。 そして3.11以降、建築にも”地域性の反映”が重要、という話になったワケである。(大分端折っているので、詳しくは前回の記事を参照ください)

グローカル・デザインの話の続きで、今回は音の話。

地域性を反映させた建築・建設。 それで三陸沿岸に建てられているのが”景観”に配慮した窓付き防波堤。

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イラスト:長瀧彩花

ちょっと待ってほしい。

防波堤建設の際に、景観を損なうかもしれない、ということが問題になるのはわかる。それを「窓付き」という形で解決しようとしたことに対して疑問がないわけではない。しかしそれ以上に、窓をつければ良いだろうとする方針の内にある「景観」に対する一義的な捉え方に疑問を感じる。言いたいことは、このような巨大な防波堤によって町の「見た目」のみならず町の「音」がどのように変化するのか、ということも考えるべきだということ。建設物は「視覚的な景観」だけではなく、「聴覚的な景観」にも多大な影響を与える。例えば、 ボウリング場やパチンコ屋や踏切といったものを思い出す時に「音」は「見た目」とともに大切になる。

1977年にマリー・シェーファーというカナダの作曲家でもあり学者でもある彼が「サウンドスケープ」(*1)という概念を作り、ランドスケープだけでなく音が作り出す空間性というものの重要性を指摘した。これがきっかけで視覚>聴覚という構造に疑義を挟むことがブームになる。

*1【サウンドスケープ】音の風景。個人、あるいは社会によってどのように知覚され理解されるかに強調点の置かれた音環境。
参考:日本サウンドスケープ協会

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イラスト:ぴりか

視覚と聴覚の空間把握は役割が違っていて、フランツ・カフカの『巣穴』でうまく表現されている。『巣穴』の主人公である怪物のようなもの(このあたりが非常にカフカ的)が自分の住処として地中に穴を掘るのだが、十分な広さを確保し、安心できると思った瞬間に土から伝わる音が気になり始めるのである。それからその見えない「音源」に対して怪物のようなものは終始想像力の中で恐怖を抱き続けるのである。

同じように、ハエは視覚的にというよりかは聴覚的に空間に侵入してくる。寝ようとする時のうっとうしさを思い出していただければ『巣穴』の主人公の気持ちがわかるのではないだろうか。

そんなわけで、グローカルに都市や建築を考える必要性があるならば、その土地・町の持つ音というものにも注目しなければいけないという話。波の音が聞こえない港町。アナウンスのない野球場。水の流れる音がしないトイレ。すごく不思議だ。

音無しでジブリ映画を一度観てみると音の重要さがよく分かる。有名建築も音を考えられたものとないものとでは入ったときの感じがものすごく違う。この期に自分の家の音響をチェックしてみてはいかがでしょうか?目を閉じて1分の間にどんな音が聞こえるか書き出してみると以外と面白いですよ。

筆者宅の場合、

朝8:10頃 近所の学校のチャイム ゴミ回収車の「バックしますピピーピピー」 朝ドラ 朝食のカチャカチャ 洗濯機のゴワンゴワン 上の階のゴソゴソ 自転車が通り抜けるシャー あくび

こういうときに日本語は擬音語や擬声語が豊富なことに気づく。他言語に訳すのって大変なんだろな。たぶんこういうのも地域性。犬の鳴き声の表し方の違いとかまさにそう。


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しーやさんプロフィール

イラストレーター:ぴりか

東京育ち、いまは憧れの北の大地で社会人1年生。
ぴりかはアイヌ語で「美しい」とか「豊か」とかほんやらいい意味。
好きな食べ物は大豆。最近のヒットはきな粉ヨーグルト。

イラストレーター:長瀧彩花

Youth for 3.11の編集長。
詳しくは「平凡な女子学生が映像作家になるまで」を参照ください。

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